人は誰しも、加齢とともに耳が遠くなって行きます。加齢に伴う難聴は病気や障害ではなく、自然な老化現象の一つと考えて良いのだと思います。
加齢に伴う難聴による聴こえは、若い人が単に耳栓をしたような状態とは全く異なり、主に下記のような特徴を持ちます。

加齢に伴う難聴による聴こえの特徴

• ① 小さい音は聴こえないが、大きい音は若い人と同じか、それ以上にうるさく不快に感じる。
• ② 声は聴こえていても、ぼやけて聴こえてしまい、言葉の聴き分けができない
• ③ 若い人は全く気にならないような小さなノイズ（空調の音、周囲の人たちのザワザワ声、店内のBGMなど）があるだけで、言葉の聴き取りが極端に落ちる場合がある。

そして最大の特徴は、多くの高齢者に、”自分に①～③のような症状が起きているという自覚が無い”ということです。加齢に伴う難聴は、20歳を超えたあたりから数十年かけてゆっくりと進行していきますので、高齢者ご本人が気が付いていない場合が多いのです。
接客の現場などで、スタッフの話が正確に伝わらないでトラブルになるケースの多くは、このことが原因なのです。高齢なお客様には、自分の聴こえが衰えているという自覚がありませんから、スタッフの話し方、伝え方が悪いと思い込んでしまうのです。

VOICE+は拡声器ではありません。また、高齢者が聴きにくい周波数成分だけを単純に強調したような音質でもありません。
上記を読んで頂ければご理解頂けると思いますが、

それではダメなのです！

音量が大きくなってうるさくなったけど、依然として言葉は聴き取れず、逆にスピーカーから出た声が店中に響き渡ってしまうのです。そんなことは、聴覚心理学の専門家なら、ずっと前から分かっていることなのです。

VOICE+は、デジタル信号処理技術によって、マイクに入ってきた声から”高齢者が聴きにくい声の成分”および”周囲のノイズにかき消されがちな成分”だけを取り出して、そこだけを強調します。
一方で、高齢者に聴こえている声の成分は強調することなく、そしてむしろ、大きすぎる成分は音量を抑えて聴かせます。
だから、普段はVOICE+の存在を忘れてしまうほど自然な音質なのに、高齢者には言葉がハッキリと、まるで浮き上がったように聴こえるのです。

VOICE+は、これからの高齢顧客対応に無くてはならないアイテムになるでしょう。

聴覚の印象としては、好きな音、嫌いな音、加工してある音などがありますが、VOICE+の音はスピーカーの音を大きくしても非常に自然な音です。
極端に特定の子音が強くならず、さらに機械的で嫌な音ではありません。不快にならない音になっています。
60代の中等度難聴の方とこのスピーカーを使って一対一で会話した際、自然な音の中での聴こえやすさ、そしてクリアな聴こえを感じていただけました。

一般的にリハビリテーションの専門職としてはST（Speech Therapist：言語聴覚士）の他に、PT(Physical Therapist:理学療法士)やOT(Occupational Therapist:作業療法士)等があります。
STは話す、聞くなどの領域の支援、またOTは食べる、服を脱ぐ、歯磨きする、顔を洗う、書く等、日常の行動の支援を担当します。言語や聴覚を支援するSTだけでなく、日常生活の中で、手などの細かな動きを支援するOTも「聞く・話す」など音声のコミュニケーションが重要になります。
ある程度の距離で細かい指示や言葉のやりとりを行うOTが担当するリハビリテーションの場面でも、このスピーカーは活躍できると思います。

一般的な場面でも、しっかり音声情報をやりとりしなければならない場所、例えば、銀行、郵便局、カウンター、緑の窓口、切符売り場、スーパーのレジなども、このスピーカーが活躍してくれると思います。
これから学生一人一人が病院や老人介護施設、子供の施設などに入る実習も始まるので、そういう場所でもこのスピーカーが活用できるのではないかと思っています。

私が実施しているのは言葉の訓練で、椅子に座ってお話をしたり、プリントに文字を書いたりする訓練になります。
一対一や一対二で行う訓練の時に、大勢の方がいらっしゃるフロアでこのスピーカーを使いました。
当施設の利用者様は全体で40～50人は来られていて毎日にぎやかな場所です。
年齢は10代の方もいらっしゃるので年齢層も幅広いですが、言葉の訓練を受ける方は60代～80代が多いですね。
このスピーカーを使ったらすぐに反応があり、聴こえが良くわかりやすいと言ってお喋りをしてくれた方もいらっしゃいました。聴力の低下があまりみられない50代の方もこのスピーカーを試してみたいと興味を持ってくれまして、実際に使うと「あー、わかりやすい、わかりやすい！」と言ってくれました。

他にも、以前は短い単語や返事ができた80代後半くらいの方の話になりますが、最近では短い単語も発さなくなり会話が少なくなったかなと職員も感じていました。
その方にこのスピーカーを使ったところ非常に反応が良く、前と同じように短い単語ではありますが会話のやりとりができるようになりました。
身体能力や生活能力の低下に伴って会話が減ってしまうこともありますが、実はその方の聴力の低下もコミュニケーションをとりづらくさせていたということに私も初めて気付きました。声が届くことによってその方の反応が変わるので、聴こえていることを実感しました。

当院では、VOICE+のスピーカーとマイクを入院中の高齢者を対象とした集団リハビリで使用しております。参加者は高齢であるため、程度は異なりますが難聴がある方がほとんどです。

病棟サロンにて集団リハビリを開催しており、1回では参加者全員に話が伝わりにくいことが悩みでした。
スピーカーとマイクを使うようになってから、難聴のある患者様がより集団リハビリを楽しめるようになったと感じております。
以前は、集団の中で声掛けが伝わらず、孤立していた患者様も、聴き取れるようになったことで、スムーズに課題に取り組むことができるようになりました。

声帯麻痺のある患者様で、有声音の発声が困難な方がお話しする際に、このマイクを使用すると、他の患者様にも伝わりやすくなる様子がありました。
以前はその患者様の話したことを、スタッフが大きな声で繰り返して他の患者様に伝えていましたが、今はマイクを向けて話して頂くことが多いです。
その患者様は少し自信がついたのか、マイクを向けると張り切って発言することができるようになりました。

普通のマイクとスピーカーは音量を増強する機能しかありませんが、この製品は高齢者に聴き取りやすい音へ変換してくれるため、 話し手の努力も軽減したと感じております。
以前は、1時間の集団リハビリをすると咽喉を痛めてしまっていたのが、このマイクとスピーカーを使用してから、大声を張り上げなくてもよくなりました。

現在、病院に勤めている中で、医療従事者の中でも、加齢性難聴に対する理解は十分ではないと感じております。
合図をせずに話しかけられたり、耳元で大声で話しかけられたりして、高齢者の方が戸惑っている場面をたびたび見かけます。
目に見えにくい障害ではありますが、難聴をお持ちの方は多く、声掛けの際の配慮や気遣いが必要だと感じております。
集団リハビリにVOICE+を導入したことをきっかけに、少しでも多くの医療従事者や患者様のご家族の難聴に対する意識が変われば良いなと思っております。

当施設は70歳代後半から100歳近い高齢者が集う40名定員のデイサービスです。
広いスペースで利用者にいくつかのテーブルに分かれて座ってもらって、職員一人が30名程を対象にする集団レクレーションを毎日おこなっています。
その際に、聞き取りに困難を示す利用者が10名前後います。
スピーカーとワイヤレスマイクを使用し、スピーカーを日ごとに異なるテーブルに置いて利用者の反応を比べてみました。

聴こえやすいという反応が得られたと同時にレクレーションへの参加意欲が高まった利用者もいれば、効果が観察されなかった利用者もいました。
効果のみられた利用者は、難聴の程度が軽度から中等度で認知機能の低下も軽度の方々でした。
効果のみられなかった利用者は高度から重度の難聴か、難聴は中等度でも認知機能が重度に低下している方々でした。
聞き取りやすさについては、難聴の度合いや認知機能など様々な要因が関係しています。
このスピーカーシステムは、必ずしも全員に効果があるわけではないという点は、理解する必要があると思います。

加齢による難聴は、現実として多くの方に起こります。
元気な生活をする上で様々な場面でのコミュニケーションは不可欠ですが、聴こえにくくなることでコミュニケーションに困難が生じ、だんだんと孤立することで認知機能の低下も進みます。
それを防ぐために、元気な方々を対象にした地域支援の様々な活動をおこなうことも言語聴覚士の役割です。
機器の特性と対象者の特徴を考慮して使用すれば、介護予防の分野でもこのスピーカーシステムは、大いに活躍するツールになると思います。